俺様魔王の甘い口づけ
「怯えないでください。私は、危害を加えるつもりはございませんので」
「…怯えるなっていう方が、無理でしょ!?だって…」
「さようでございますね。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「え…、あ、佐倉芽衣子です…」
「芽衣子さまでございますね」
その優しい微笑にも裏があるように思え、疑心暗鬼になる。
怖い…。
いったいここがどこなのか、悪魔というのは本当なのか、聞きたいことはたくさんあるはずなのに。
「この世界の人間界とも違う、異世界からいらした方なのですね」
「え……」
ハンスは、冷静にそう言った。
異世界…?
「よく、あの森に迷い込んだ人間がここに来るのです」
「え…、私以外にもいたの…?」
「その誰しもが、我々悪魔や魔王の存在自体を知らないのです」
それはそうだろう。
私だって、そんなものそれこそ架空の生物だと思っていた。
ハンスが言うことを簡単にまとめれば、ここは地球でも日本でもない、悪魔が普通に存在する異世界ということ。
そして、あの森に迷いこんでやってくる人間は私だけじゃなかったこと。
「…人間界ってことは、人間もいるのよね?」
「はい。住む大陸は違いますが、もちろんいますよ」
「あなたたちが悪魔っていうのは…」
「信じられませんか?」
私は、小さく頷いた。