俺様魔王の甘い口づけ



「魔王さまを悪く言うことは、私が許しませんよ」

「…っ、でも」

「なにも知らないあなたが、とやかく言う資格はございません」



突然、厳しい口調になったハンスは、眉を顰めそう言った。
確かに、私には関係ないし、知りもしないことだけど。
目の前であんな風に残酷に殺されるのを見たら、黙ってなんていられないのに。




「もう、夜も更けております。今日はこのままお休みください」

「ちょっと待って、私帰りたいんだけど」

「どこに帰ると?異世界から来たあなたに、帰り道などございませんよ」





冷たく言い放つ。
さっきまでの優しさはどこへ行ったの。
私が、魔王の事悪く言ったから?
だからって、とんだ変わりようだ。





「そんな、困るわ!」

「でしたら、明日にでもあの森に行って確かめてみればよろしい。おそらく、帰れることはないでしょうから」

「そんな!」

「あの森は、気まぐれなのでしょう。いつも、異世界と繋がっているわけではございません」




それは、確かにそうだろうけど…。
ずっと繋がっていれば、迷い込んでくる人は後を絶たないだろう。
そんな話は聞かないし、確かにあの場所にあんな森なんてなかったんだ。
もっと早くにちゃんと気づいていればこんな事には…。
今悔やんだところで後の祭り。




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