俺様魔王の甘い口づけ
真夜中。
私は目を覚ます。
…トイレに行こう。
もぞもぞと起き上り、眠い目をこすりながら部屋から出る。
廊下は、ぽつぽつと道しるべ程度に灯りがついている。
その灯りを頼りに左に進む。
「…あった」
どこもかしこもちゃんとすればとてもおしゃれなのに。
不気味な雰囲気の演出か、蜘蛛の巣が張り埃をかぶっている。
気にしない、気にしない。
そして、私は用を済ませると、ふとハンスの言葉を思い出す。
トイレを出て左には決して言ってはいけない…。
人というのは、ダメだと言われると余計に気になる生き物だ。
…と私は思う。
「ちょとだけなら、いいよね…」
誰にも気づかれなければいいんだし。
私のいけない好奇心がメラメラとわいてしまった。
そおっと、足音を立てないように進む。
この城の中も、少し気になるしね。
だって、見るものすべてが新鮮で。
ここが、あの冷酷非道な悪魔の城でなければワクワクしていただろう。