俺様魔王の甘い口づけ
全て、あいつがいけないんだ。
あいつさえいなければ、私はいわゆるファンタジーの主人公みたいなものだ。
異世界に迷い込んだ普通の女子高生が、そこで出会った異世界の人と恋に落ちる。
とってもドキドキするストーリー。
なのに、あいつのせいですべて台無しだ。
あいつと恋に落ちる?
絶対にありえない!
殺されることはあっても、落ちることは絶対にない!
しばらく進んだ突き当たり、そこに中に入れる扉を見つけた。
とても仰々しい大きな扉。
重量があり、開け閉めはとても重そうだ。
誰かの部屋なのかな。
それとも、なにか宝物でも隠してある部屋なのかな。
そんなことを考えるだけでも少しだけワクワクできる。
そうやって、気分をあげなくちゃ気が狂いそうだ。
…帰ろう。
なにやってるんだろう。
こんなことしても、意味はないのに。
私が踵を返しそこから立ち去ろうとした時…。
突然その思い扉が開き、中から伸びてきた手が私の腕を掴んで扉の中へ引きこんだ。
「ギャッ!」
ものすごく色気のない声が、出た。
我ながら…最低だ。