俺様魔王の甘い口づけ
ちょっと、あのハンスって側近、私を冷酷魔王と同じ階にある部屋に連れて来たわけ?
バカじゃないの?
普通、会わなくて済むように違う階にするとかするでしょうが。
なにそれ、助けてくれようとしたわけじゃないわけ?
「あんたの部屋だって知ってたら、絶対近づかなかったのに!」
「どういう意味だ」
「そのまんまの意味よ!」
騙された!
信じられない。
そうだった。
あの人も、そう言えばそっち側の人間だ…じゃなくて、悪魔だ。
それに、私が魔王の事悪く言ったら怒ったし。
もっと早くに気づくべきだった。
…なんか、そんな事ばかり。
「いいだろう。お前をこの城に置いてやろう」
「は?」
「バカのわりに、なかなかいい味をしておった。非常食として取っておいてやる」
「…ちょっと、好き勝手言ってんじゃないわよ!」
誰が非常食だ!
私は、食材じゃない!
腹が立ってもう一発でもお見舞いしてやろうと立ち上がる。
でも、その瞬間世界が回って大きな音を立てて地面に倒れた。
「いたぁ!」
思いっきり倒れた。
ていうか…、とっさに手ぐらいだしてくれるでしょ?
そりゃ、私の血を吸おうとしたこいつにそんなことを求めるのが間違いかもしれないけど。
「ちょっと、助けなさいよ!」
「…バカか。なぜ俺様がそんな煩わしいことをしなければならないんだ」
「はあ?」