俺様魔王の甘い口づけ
アンリは、ルイを連れて大広間を出て行く。
私はなにも言えずそれを見送る。
「芽衣子さま・・・」
私の様子を心配したハンスが声をかけてくれる。
でも、私はうまく答えられない。
「アンリさまは・・・、ルイさまの婚約者なのです」
婚約者―――――・・・。
そんな人がいてもおかしくないのかもしれない。
私の知らない世界なんだもん。
魔王という、一番上に立つ者に婚約者がいることくらいおかしなことじゃないのかも。
それを、私に話さなかったのだって。
私なんかに知らせる必要はなかったからだし。
だから。
ルイにとっては私の存在なんてその程度ってことで。
私が、自惚れていただけなんだ。
胸が、モヤモヤする。
頭の中にもやがかかったみたい。