俺様魔王の甘い口づけ
「芽衣子さま!」
ドタバタと足音を立て走ってくるのは、ハンスだ。
なんだか、慌てる姿が似合わない。
慌てる時でさえ冷静そうなイメージがあるのに。
「あ、おはよう」
「おはようではございません!なぜ、ルイ様の自室に近づいたのです!私、お伝えしましたよね?」
会ってそうそう説教モードだ。
もう、勘弁してよ。
「ハンスがちゃんと教えてくれなかったからでしょう!あいつの部屋だって知ってたら絶対に近づかなかったわよ!」
そりゃあ、最初は絶対にうろついたりしないって息巻いていたけど、好奇心には勝てなかったんだから。
でも、それが魔王の部屋だというのなら別よ。
絶対に近づきはしなかった。
「それは、同じ階だと知れば、嫌だと騒ぎ立てられると思いまして…」
「そ、それは…」
当然だろう。
あんな状況を目の当たりにして、いいよって言う人がいるのなら会ってみたいものだわ。
「ですが…、驚きました」
「なにが?」
「ルイさまに、あの人間をどうにかしろ、邪魔でならんと言われたので、私はてっきりもう血を吸い取られ死んでしまったのだと…」
「ああ…」