俺様魔王の甘い口づけ



「芽衣子」




愛しい者を呼ぶような声。
ルイ自身は、気づいてはいなかったが。



それはとても、優しい声だった。





「・・・はぁ・・・っ」





一つ、息を吐いた芽衣子が落ち着いたように治まる。
掌に感じる熱が消えていく。





「芽衣子・・・?」




そっと掌を外してみれば、契約のしるしから伸びていた触手は消え、そのしるしも黒色に戻っていた。
成功したのか?



芽衣子は、救えたのか?





―芽衣子の心の闇は、魔術でも払うことはできない。それができるのは、本当に彼女を思う心だけ




リリーのその言葉を思い出した。



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