俺様魔王の甘い口づけ
こんな大きな城に、あの魔王はハンスと二人で住んでいるの?
なんて贅沢もの。
でも、贅沢なのかな。
寂しくないのかな。
そもそも、そんな概念なさそうだ。
心配するだけ無駄。
「じゃあ、この料理もハンスが?」
「ああ、いえ、食事だけはもう一人の執事がおりまして、その者にやらせております」
「ふうん…」
もう一人いるのね。
どんな人なんだろう、というか、悪魔だっけ。
「いずれ、芽衣子さまに紹介させていただきます」
「え、ありがとう…」
そんな長居するつもりないんだけど。
どうやったら帰れるんだろう。
早く帰りたい。
「ねぇ、私、あの森に行きたいんだけど」
「森ですか?危険にございますよ」
「でも、あそこに行けば元の世界に帰れるかもしれないでしょ?私、今すぐにでも帰りたいの」
こんな化け物がたくさんいる世界になんていたくない。
さっさと帰ってこんなこと忘れるんだ。
「でしたら、その執事をさっそく紹介いたします」
「え?」
「その者に案内させましょう。ですが、その者は特別武術が秀でているわけでもありませんので、芽衣子さんの身を守れるわけではありませんが」
…それ、意味あるの?
別に、私はさっさと帰るんだからそれでもいいけど。