俺様魔王の甘い口づけ
「な、なによ!」
顔が近い。
慌てて私はルイから離れる。
その一瞬、ルイが寂しそうな表情を見せた。
…気がした。
な、なに…?
どうしてそんな顔するわけ?
「こんなところでなにをしている」
でも、次の瞬間にはいつもの冷たい表情に戻っている。
気のせい…?
なんか、調子狂うじゃないか。
「そ、掃除よ!見てわからないの?」
「なぜ、お前がそんなことをしている。誰の命だ」
「誰でもないわよ。私が勝手にしてるの!」
私は下に落ちた雑巾を拾い上げる。
ルイなんかの側になんていたくないのに。
いつ血を吸われるかわかったもんじゃない。
でも、ルイはそんな仕草を少しも見せない。
非常食だから、本当にとっておくつもりなの?