俺様魔王の甘い口づけ
「お前は、俺様に文句を言うくせになぜこの城を出て行こうとせんのだ」
「は…?出て行こうとしたでしょ。でも、元の世界に帰れなかったんじゃない。あんただって知ってるでしょ!」
私だって、できたらそうしてるわよ。
でも、戻れなかった。
戻れる前に魔物が出てきて、あんたにも邪魔されたんだ。
「戻れなかったとして、どうしてこの城に戻る必要があるのだ。人間界にでも行けばよいものを」
「に、人間界なんてどこにあるのか知らないじゃない」
「あの森を抜けた先をずっと言ったところが人間界だ」
「え…?」
そ、そうだったの?
そうだ、私一度その向こう側にも行ってる。
枯れ果てた大地が広がっていた。
その先に人間界があったっていうの?
私、見慣れない光景に慌てて引き返したんだ。
そしたら、この城がある場所にたどり着いた。
なにそれ……。
「どうした。今から人間界に逃げ込みたくなったか?」
鼻で笑ったルイが私を見下ろす。
私は険しい顔をして俯く。
本当に、いちいちむかつく。
そんなことを伝えてどうしようっていうのよ。
私を追い出したい?
非常食だと言ったくせに。
それとも、バカにしてるの?
目と鼻の先に人間界があるのに、のこのこ非常食としてここに戻ってきたと。