俺様魔王の甘い口づけ



それが、なぜ来てしまったんだろう…。
私は結局広間に来て椅子に座り、目に前に並べられたお皿とにらめっこをしていた。


無駄に縦長の大きなテーブルの短い方に向かいあうように座った私とルイ。
魔王であるルイと、人間のしかも非常食である私の距離なんだろう。
それは、別にどうでもいいんだけど。
これだけ離れていて、一緒に食事をする意味ある?
そもそも、一緒に食事をしていると言えるの?



いや、別に一緒に食事をとることが目的ではなかったのかも。
側近はハンスしかいない。
私の食事のときにもついてくれるのはハンスだ。
ハンスの手間を考えての事だったのかも。





「……もう」




それでも、せっかく同じ空間で食事をとるならどうせの事側で食べたい。
ルイなんて、本当に大っ嫌いで、酷いと思ってるし、最低だと思ってるから、顔だってあわせたくなんてないけど。

ここで生きていくためには、顔を合わせないなんて無理だし。
だったら少しでも、歩み寄る努力はしてもいいかも…なんて。


嫌いな事に変わりないけど、置いてもらっている身でもあるわけだし。





私は立ち上がると、両手にお皿を持ちルイの側に向かう。



「芽衣子さま?」



私の行動に驚き声をかけるハンスの声も無視して私はルイの側の縦長側の一番端っこに移動した。
そこにお皿を置き、腰を下ろす。





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