俺様魔王の甘い口づけ



「…っ!」



勇者は顔をゆがませながら、身体を起こす。
よかった、無事みたいだ。
ホッと肩を落とした私と目があった。




「貴様!」

「え?」

「魔王の手先の悪魔だな!」



突如標的を変えたように敵意を向けられる。
ちょっと、どうして私が魔王の手先なのよ。
というか、そもそも悪魔でもないし!
酷くない?
私のどこが悪魔に見えるっていうのよ!



「まずは貴様から倒してやる!」

「は、はあ?」




切羽詰まったんであろう勇者が、標的をすっかり私に変更し、剣先を向けながら走ってくる。
ちょっと待ってよ!
なんで私がそんな目に遭わないといけないわけ?




「覚悟!」




覚悟なんてできるわけないでしょー!
思わず身動きもとれず目をつぶる。
死を覚悟した瞬間。

しかし、一向にやってこない痛みにゆっくりと瞳を開ける。






< 58 / 425 >

この作品をシェア

pagetop