俺様魔王の甘い口づけ
「…っ!」
勇者は顔をゆがませながら、身体を起こす。
よかった、無事みたいだ。
ホッと肩を落とした私と目があった。
「貴様!」
「え?」
「魔王の手先の悪魔だな!」
突如標的を変えたように敵意を向けられる。
ちょっと、どうして私が魔王の手先なのよ。
というか、そもそも悪魔でもないし!
酷くない?
私のどこが悪魔に見えるっていうのよ!
「まずは貴様から倒してやる!」
「は、はあ?」
切羽詰まったんであろう勇者が、標的をすっかり私に変更し、剣先を向けながら走ってくる。
ちょっと待ってよ!
なんで私がそんな目に遭わないといけないわけ?
「覚悟!」
覚悟なんてできるわけないでしょー!
思わず身動きもとれず目をつぶる。
死を覚悟した瞬間。
しかし、一向にやってこない痛みにゆっくりと瞳を開ける。