俺様魔王の甘い口づけ


「貴様も一緒に殺されたいか」

「それは嫌!もう!あなた、さっさと行って!殺されるわよ!」



私だって必至だ。
こんなことして後でどんな目に遭うか…。
それでも、ここで見殺しにしたら絶対に後悔するから。


勇者は、少し戸惑いを見せながらも私の声にハッとして逃げ出した。
勇者としてはかっこ悪いかもしれないけど、この状況じゃあ仕方ないよね。





「貴様…余計なことを」




勇者の姿が見えなくなり、ルイを引き止めていた力を緩める。
すると、怒りの炎をメラメラと燃やしたルイが私を睨みつけた。
私は、背筋が凍る思いをしながら逃げ出したい気持ちで一歩下がった。
ふと、ルイの左腕に視線が行く。
そこは赤く染まっていた。



「え…」




もしかして、私を庇った時に?
あの剣を腕で受け止めたの?
なんで!?




「ちょっと、あんた!!ケガ!」





私が慌てて叫ぶと、ルイはシレッとした顔で一度だけその腕を見る。




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