俺様魔王の甘い口づけ
「これしきのケガ、すぐに治る」
「ダメよ!なに言ってるの!ハンス!救急セット持ってきて!」
「いいと言ってるだろう」
いいと言い張るルイを無視してハンスにお願いすると、ハンスは少し戸惑いながらも駆け出した。
「ほら、ちょっとこっちきて」
「俺様に触るな!」
「私だって、触りたくないわよ!うるさいな!黙ってきなさいよ!」
ついついケンカ口調になってしまう。
だって、いつだってルイの方がケンカ腰で上から目線なんだから仕方ないよね。
私は強引にルイを階段のところまで連れて行く。
部屋まで行くよりここで手当てをしてしまおう。
「うわぁ…」
真っ赤に染められた袖をゆっくりと捲る。
ざっくりと深く切り傷ができているのを見て、ぞっとする。
こんな怪我をしているのに、なんでこんな平気そうなの?
魔王だから?
「い、痛くないわけ?」
「…ふん、これくらいのケガで、ピーピー泣くわけがなかろう」
ああ、でも痛いのは痛いのね。
痛くない、とは言わなかったもの。
ほんと、素直に痛いって言えばいいのに。
ルイがケガをしても、ハンスは慌てた様子はなかった。
いつもは、手当どうしてたんだろう。
「なぜ、こんなことをする?」
ルイが少し神妙な顔をして言った。