俺様魔王の甘い口づけ
私が人間だから、迷うことなく人間が正しい。
そうやって言い切ることができない。
それは、人間さえも魔王を殺しその血を求めているから。
平和な世界で生きてきた私にとって、それが人間であっても悪魔であっても簡単に殺すとか、それが正しいことだとか思えない。
悪魔だと言ったって、姿形はまるで人間と同じだもの。
私たちが、生きるために牛や豚を殺すのとは、また違う気がするんだ。
「なにを考えている」
「え?…なにも」
ルイが眉を顰める。
私がごまかしたことが気に入らない様子だ。
でも、だからってルイだけに同情するわけにもいかない。
ルイだって、人間の血をほしいままに吸い尽くしてしまうのだから。
いまだに浮かぶ血を吸われからからになった女の人の身体。
思い出すたび、こみ上げてくるいろいろな思い。
恐怖だったり、
悲しみだったり、
怒りだったり。
「人間の中でも、お前はすぐに泣くのだな」
「煩いな。嫌なら見ないでって言ってるでしょ」
この薄暗い世界を見て、悶々とする。
行き場のない想いが涙となって溢れるのだ。
情緒不安定だ。
ああ、嫌になる。
こんなに涙もろくなるなんて。