俺様魔王の甘い口づけ
涙のあと
あの後、私はしばらく泣き続けた。
そんな私にルイはもちろん優しい言葉をかけてくれることはなく。
いつの間にかルイはどこかに行っていた。
その代わりに現れたハンスが私に駆け寄り優しい言葉をかけ、私を部屋まで送り届けてくれた。
「大丈夫でございますか?」
「…うん、ごめん」
「いえ」
ハンスは暖かい紅茶を用意してくれた。
私はそれを受け取り手でカップを持つ。
手から伝わる温もりに、少しホッとする。
「見知らぬ世界で、いろいろなことがありましたから…。心がお疲れなのでしょう」
「うん…。なんか、いろんな思いがわいてきて…止まらなくなっちゃった」
強くならなきゃと思うけど。
いつ戻れるかわからないのだから、この世界に慣れなきゃと。
思えば思うほど空回りをしている気がする。
「でも、タイミングよく現れたね…」
「え、ああ…。ルイさまが」
「え?」
「あそこに行けと申されましたので。向かったところ、芽衣子さまを発見いたしました」
ルイが?
私が泣いていることを、ハンスに伝えようとしたってこと?
それで、どうにかしてもらおうと?
そんな、まさか。
でも、ハンスをあの場所に向かわせる理由がわからない。