俺様魔王の甘い口づけ
私が泣きわめいて煩いからどうにかしてもらおうとしたんだろうか。
煩いなら自分がどこかに行けばすむ話だし、現にルイはそうした。
いつの間にか姿を消していたんだから。
でも、その時にルイはハンスをあそこに向かわせるように仕向けた。
「ルイさまは、芽衣子さまに興味を持ち始められているのかもしれませんね」
「興味…」
「ルイさまが、殺さず私にそれとなく伝えることをしたのです。それ程の事なのですよ」
今まで、どんな仕打ちをしてきたんだあの冷酷魔王は。
それでも、仲良くなろうという私の目論見が少しでも成功したのだとしたら嬉しい。
ルイに、そんな優しさがあるとはやっぱりにわかに信じられないけど。
「もし…本当に、ルイが私のためにハンスを向かわせたんだとしたら…。ねえ、ハンスお願いがあるの」
「はい、なんなりと」
ハンスは笑顔で頷いた。
素直に“ありがとう”とは言いにくい。
今までさんざん悪態をついてきたんだから。
それでも、お礼も言わずシレッとしているなんてできないし。
「字を、教えてほしいの」
私が考えた結果。
手紙で、伝えようと思う。
たった5文字の言葉だけど。
伝えないより、ましだよね。