俺様魔王の甘い口づけ



「あ、いた!」



城の中をグルグルと歩き回っていた私は、ようやくルイの姿を見つけた。
部屋にもいなくて途方に暮れていたのだ。




「なんだ、人間。無闇に俺様の城をうろつくな」




相変わらずの俺様発言。
私はめげずににこっと笑うと手紙を差し出した。



「なんだ、この紙切れは」

「あのねぇ…。手紙!」



怪訝そうなルイに押し付けるように渡した手紙。
受け取ったのを確認し、踵を返す。




「…待て、人間」




しばらく進んだ先で呼び止められた。
ルイは、視線をこちらに移しその手に持った手紙を掲げていた。




「なんだこの暗号は」




一応読んでくれようとしたことに驚きながらも私はにっこりと笑う。
わからないのも無理はない。
だって、そこには私の知っている言葉で“ありがとう”と書いたんだ。


ハンスには言葉は結局教えてもらわなかった。
代わりに紙とペンをもらったんだ。




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