俺様魔王の甘い口づけ



そうして合わさった文字を繋げていき、文章ができていく。
その文章も、私が慣れ親しんだ日本語の文法と変わらないようだ。
この文字さえ覚えれば、本も簡単に読めるようになるってこと。


でも、それが一番の難関かもしれない。
これが本当にローマ字だったり、ひらがなだったりすれば話は別だけど。
法則は同じだと言え、見る文字は記号のようにも暗号のようにも見える。

すべてが同じように見えるのだ。





「ほれ、俺様は教えてやったぞ」

「え?ああ…、わかった。私の言葉を教えたらいいのね」

「そうだ。なんのために、こんな面倒なことをしたと思っておる」



そうでしたね。
意外だったけど。
もっと強情に拒否するかと思っていたし。
こんなにも、気にするなんて予想外だ。

私が書いた言葉になんて興味ないかと思ってた。




私は別の髪を広げ、ルイがしたように50音を書き記していく。
その指先をじっとルイに見つめられ、戸惑う。
手が、震える。

それは、恐怖とかそう言うのとは違う。



もっと違う、なにか。





「できた。ほら、ルイが書いたのと合わせてみたらわかりやすいと思う」

「…ほお。まったく見慣れぬ記号だな」

「記号じゃなくて、文字よ」



そう言う私も、ここの文字は記号に見えるんだけど。




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