俺様魔王の甘い口づけ
「…床に寝られると邪魔だっただけだ」
「それだけ?」
「そうだ」
そう言うことにしておこう。
簡単に人でも魔物でも殺せてしまえるルイが、非常食と言い放つ私を自分のベッドに邪魔だという理由だけで寝かせるだろうか。
答えは、否だろう。
どう思ってそんなことをしてくれたのかはわからないけど。
不器用なのかもしれない。
優しさを、素直に表すことが苦手で、だからこそ誤解されやすいのかも。
「お前は、」
「芽衣子」
「…しつこいな」
「人間は、図太いのよ」
「…お前は、なぜそこまで俺様に拘る」
「だから…。まあいいわ。そのうちね。…拘ってるつもりなんてないわよ」
たくらみがないわけじゃない。
生き残るためにと思ってる部分もある。
それでも、それだけじゃなくなっている気もするんだ。
私自身が、ルイの事をもう少し知りたいと思い始めている。
不器用な優しさに触れるたびに、その思いは重なっていく。
「でも、怯えて逃げているだけじゃ、なにも変わらないから」
「なにを変えたいのだ」
「私の未来も。…ルイの心も」
「俺様の、心…?」
怪訝そうに眉を顰める。