俺様魔王の甘い口づけ
人間界
浚われた先は
この世界に来て1週間が過ぎた。
私が元の世界に戻れる気配は、ない。
ルイは、相変わらず冷たいままだし。
魔物たちも変わらずルイに土産物と称して人間を連れてくる。
ルイは、今まで通り変わらず人間の血を吸い、時には殺してしまうようだ。
それでも、ハンスは目を輝かせて言うんだ。
「ルイさまが、人間を殺さず生きて帰す頻度が3回から1回に増したのです」
少し前は、10回に1回だと言っていた。
元々はゼロだったんだろうから、それを想えば確かに進歩なのだろう。
それでも、残り2回は変わらず死んでしまうわけで…。
それを喜んでいいものなのか、私にはわからなかった。
「へえ」
私は、冷静にそう言うしかなかった。
私が何を言おうと無駄なことがわかってるから。
それでも、その頻度を思えば変わっていっていると思うべきなのだろうか。
「それとですね…」
ハンスが、少し喜びをその微笑に浮かべながら続けた。
なにか嬉しいことがあったようだ。
ちゃんと一緒に喜べることならいいな。
私は背筋を伸ばし、聞く態勢に入る。
「ルイさまが、私の名を呼んでくださったのです」
「…え?」
ハンスは、とても嬉しそうに笑った。