俺様魔王の甘い口づけ
「私を呼ぶ際に、一声ハンス、と…。初めてでしたので、少し戸惑ってしまいました」
「そ、そうなんだ…」
心臓があからさまに騒ぎ立てる。
私が、名前を呼んであげろって言ったから?
そんな、まさか。
ルイが私の助言を聞くなんて。
でも、確かにハンスは名前を呼ばれたのだと言った。
それも、とても幸せそうな笑顔で。
それは嘘には思えなくて。
「まぁ、次の瞬間にはいつも通り戻っていましたけど」
「…嬉しかった?」
「ええ、それはもう。ルイさまに名前を呼んでいただけるなど、これ以上ない幸せにございますよ」
やっぱり、名前って大切で、特別なんだ。
ハンスの笑顔を見て確信した。
ルイにも、それがわかってくれたらいいな。
「芽衣子さまがいらして、とても幸せなことが続いているように思います」
「私は関係ないよ」
「いえ、芽衣子さまのおかげです。芽衣子さまと一緒におられるルイさまは、とても楽しそうにしておりますから」
「…楽しそう?」
いや、ありえないでしょ。
楽しそうに、とかとっても縁遠いと思うんだけど。