だから、キスして
不安とイライラを抱えたまま自分の席に戻り、本郷さんから受け取った書類を確認する。何気なくめくった二枚目の書類には、真ん中に黄色い付箋紙が貼られていた。
それを見た途端、私は慌てて付箋紙をはがし、制服のポケットに押し込んだ。
”今夜一緒に晩ご飯を食べよう。おまえの好きなワインもつけるぞ”
なに考えてんの! 私がチェックしないで書類をそのまま主任に回したらどうするつもりだったの!?
こんなドキドキいらない! 少しムッとしながらも、やっぱり嬉しくて自然に頬が緩んだ。
年末調整の書類を見てニヤニヤしてる私って、絶対変な奴だと思われてる。
今夜、絶対文句言ってやるんだから。
さっきまで不安とイライラを抱えてたのに、我ながらお手軽な女だと思った。