めぐりあい(仮)





「あたしだって、蓮哉といたいよ……」




涙交じりに想いを伝える。


伝えきれなかった、


言い切れなかった、


蓮哉への気持ち。





「すごく好きだもん。本当は蓮哉といたい」




「うん」




「だけど、赤ちゃんが出来て、蓮哉に負担もかけたくないし、心配もかけたくないって。だから言うつもりもなかった」





1人でどうにかする。


どうにかしてみせる。


そう思っていたから。






「しばらく蓮哉と連絡取れなくて、すごく辛かった」




「うん、ごめん」




「だから今蓮哉が目の前にいて、すごく嬉しい」





必死にそう伝えると、


蓮哉は愛しそうにあたしを


優しく抱きしめた。





「好きだ、妃名」




「蓮哉…」





あたしに向けての想いを耳にして、


涙を止めることが出来なかった。


ずっと手に入れたかったこの人を、


やっと抱きしめることが出来た。





「迷惑とか、負担とか、そんなこと考えなくていい」




「うん」




「俺にお前を守るのを許してくれ」




背中に回る大きな手が、


温かくて愛おしい。


狂おしいほど、あなたを待っていた。






「全部をかけて守ってやる」




「甘えてもいい?」




「甘えろ。俺の女になれ」




「…はい」






蓮哉の女。


今日から蓮哉は、


あたしのそばにいる。


嘘のような現実が、


あたしの感情を高ぶらせる。






「俺のために産んで。一緒に育てるから」




「いいの?」




「当たり前だろ。俺の子、だから」




「蓮哉、ありがと」




涙と鼻水で蓮哉の肩は


びしょびしょ。


そんなことお構いなしに、


蓮哉はあたしを抱きしめ続ける。





「飯は俺が作るから」




「いいよ。それくらい出来るって」




「いいから座ってテレビでも見てろ」




髪にくしゃっと触れ、


蓮哉は台所に行った。


ほら、やっぱり心配する。






「じゃあ、あたしの好きな物作ってね」




「うるせえ。黙ってろ」





部屋でテレビを見ながら、


蓮哉のご飯を待った。


手際よく、音が聞こえ、


美味しそうな匂いがする。


覗きに行くと、


向こうに戻れと追い返される。


蓮哉って、こんなに心配性だったっけ。





「ごちそうさまでした」





完璧な料理を食べ終え、


食器を片そうと立ち上がると。





「次こんなことしようとしたら、縛るぞ」





なんて、不器用なことを言われた。


あたしは嬉しすぎて、


笑ってしまうと、


それを見た蓮哉は少し不満そうに


顔を歪めた。








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