めぐりあい(仮)
「朝陽があたしを好きだって言ってくれて、すごく嬉しかった」
「うん」
「だけど、気持ちには応えられない。あたしには好きな人がいます」
だけど朝陽は、蓮哉にも誰にも、
切れないもので繋がってる。
親友だよ。
朝陽はあたしの、
大事な親友だから。
「こんなあたしだけど、これからも友だちでいてください」
朝陽を見つめてそう言うと、
朝陽は分かったよと言いながら。
笑ってくれた。
「いてください、って。言われなくてもいてやるよ」
「うん、ありがと」
きっと朝陽はあたしとのことで、
いろいろ悩んで、苦しんで。
それでも好きだと思ってくれたから、
たくさんのことをしてくれた。
だけどそれを申し訳ないと感じるのは、
少し違う気がするから。
「蓮哉も言ってた。朝陽のおかげで間に合ったって」
「まじで、やられたわ」
何だか久しぶりに、
2人で思い切り笑った気がする。
「言っといて。口、軽いですねって」
「了解。ちゃんと伝えます」
朝陽はこれからのあたしとの関係、
辛かったりするのかな。
好きだって気持ち、
なくすのって難しい。
あたしはそれが分かってるから。
「本当、よかった。幸せそうで」
「朝陽のおかげだってば」
だけど朝陽とは、
すっと仲良くしていたい。
大人になっても、
ばか言いながら遊んだりしたい。
「今日、何か奢れよ」
「残念、バイトでした」
「まじ、タイミング悪すぎだろ」
廊下に笑い声が響く。
そんなあたしたちを、
周りはまた変な風に
見ているのだろうか。
「お前、子ども産んで育てられるのかよ」
「育てるよ。何としてでも」
お腹にそっと手を当てる。
少し膨らんでるかな、って
くらいにしか変わっていない。
「俺に名前付けさせろよ」
「嫌だ。センスなさそう」
だけど、今のあたしが強い理由は、
赤ちゃんのためだけ。
たったそれだけなのに、
人って、女って、強くなれる。
「吉川が幸せじゃなかったら、ぶっ飛ばすとも伝えといて」
「はいはい」
じゃあね、と。
昼休みの終わりのチャイムと共に、
朝陽と離れ、1人教室に戻る。
「どうだった?」
「ちゃんと話して来たよ。分かってもくれた」
鳴海にそう話すと、
よかったと安心した顔を見せる。
「でも、よかったね、妃名子」
「あたしね、今までで1番、今が幸せ」
「でしょうね」
顔に書いてある。
そんな冗談を言って、
2人で笑い合った。
「無事、生まれてくるといいね」
「うん」
再びお腹に触れ、
心の中で声をかける。
元気に生まれて来てね。
ママといっぱいお話しようね。
そんなこんなであたしの子どもは、
もうすぐ3か月になります。