めぐりあい(仮)
11月下旬。
あたしの高校で、
季節外れの行事が行われる。
「まだかな」
「妃名子、冷えるから中で待たない?」
「うーん、でももう着くって言ってたんだけど」
校門には、大きなアーチ。
校庭にはたくさんの出店と、
中央に大きなステージ。
こんな時期に文化祭というのが、
あたしの高校のビッグイベントの1つ。
「あ、来た来た」
鳴海が嬉しそうに手を振り、
遠くにいる3人に手を振る。
「遅いんですけど」
「ごめん、混んでて」
スーツ男子が3人。
蓮哉と千秋さんと健斗くん。
外部からの入場も可能で、
ずっと前から今日のことを
約束していた。
「だからこんな所で待つなって」
「だって…」
来て早々、蓮哉に怒られる始末。
何よ、だって来るのが、
楽しみだったんだもん。
「嫌ほど会ってんだろ」
「そうだけど…」
「まあ、2人とも!喧嘩はやめてくださいよ」
気まずい空気に、
割り込んで来てくれる健斗くん。
「妃名子も、蓮哉さんに早く会いたかったんだよな!」
「別にそういうわけじゃ…」
「蓮哉さんも、運転してる千秋さんに急げって怒ってたから」
健斗くんがそう言うと、
蓮哉は思い切り健斗くんの頭を叩き。
「何でお前はそう、余計なことしか言わねーんだ」
そう言って、
先に中に入った千秋さんと
鳴海の後を追って行った。
「俺たちも行こっか」
「そうだね」
大きなアーチをくぐり、
たくさんの出店を見て回る。
みんな楽しそうにはしゃいでいて、
あたしまですごい楽しくなった。
すれ違う人たちは、
3人を見て驚きつつも、
視線を集めている。
学校に先生以外の人たちが、
スーツでいて、
しかもイケメンときたら、
みんな見るに決まってる。
「2人は何も出してないの?」
「クラス自体は何かしてるけど、あたしたちは参加しなかった」
あたしたちのクラスは、
たこ焼きを売っているらしいけど、
鳴海が絶対させないと反対され、
仕方なく断念した。
立ちっぱなしもよくないし、
動き回ることなんてさせられないしって。
「それにしても懐かしいな」
「だよな」
「よく3人で遊びましたよね!」
そういえば、蓮哉たちも、
ここの卒業生だっけ。
「吉川、伊藤」
その時、おじさんの声がして、
振り返ってみると、
あたしたちのクラスの担任がいた。
たくさんの卵を抱え、
あたしたちを呼ぶ。
「何、先生」
「これ、卵。教室持ってけ」
「いやいや、あたしたちやってないから」
鳴海がそう言うと、
あれそうだっけ、と言いつつも、
無理矢理卵を持たせる。
「俺も忙しいんだって」
「よく言うよ」
わははは、と笑う。
一見おじさんに見えるこの先生も、
まだ30歳過ぎ。