めぐりあい(仮)
「ごめんな、妃名」
「蓮…」
そんなこと、
悩んでたの。
「好きなんだよ、悔しいけど」
距離が縮まって、
目の前に来た蓮哉は。
あたしをそう言って、
抱きしめた。
「後悔してないか?」
「後悔?」
「俺の所に来て。木嶋さんの所、離れて」
ねー、蓮哉。
そんなことで、
あなたは悩んでいたんだね。
「蓮哉」
あなたからしたら、
すごい悩みかもしれない。
だけどね、あたしからしたら、
小さすぎて笑っちゃうくらいだよ。
「何言ってんの、ばかだな」
だってね。
あたし、こんなにも、
あなたが好きなんだよ?
「後悔なんてしてるわけないじゃん」
「本当によかったのか?」
耳元で囁く蓮哉の声を、
この先あたしは一生忘れないと思う。
今まで感じようとしてなかった。
何も考えていなかった。
この人は、こんなにも、
あたしを愛してくれてるんだな。
「あの日、もし恵莉香さんがいること知ってても、きっとあたしは悠太郎の家に行ったよ」
後悔をしていると言うなら、
あたしが取り除いてあげる。
大丈夫。
あの日のあのことがあってもなくても、
あたしはこの道を進んでる。
「行ってても行ってなくても、あたしはきっと、今ここにいる」
そんなに1人で抱え込まないで。
思い悩まないで。
後悔だなんて、してほしくない。
「もしあの日、違う方向に進んでても、あたしは蓮哉を選んでる」
気付かなかっただけ。
ずっとあたしは、
あなたを想ってた。
「後悔なんてしないでよ。いいじゃない、それほどあたしを好きだって、思ってくれてたんでしょ?」
後悔するなら、
勝手に後悔すればいい。
だけどあたしは、
蓮哉には感謝してる。
「あたしが欲しいって思ってくれてたんでしょ?ね、好きなんでしょ?」
そう言って蓮哉を見ると。
少し意地悪く笑って、
調子に乗るなと言った。
「ごめん…」
「妃名がいいなら、俺はいいんだけど」
一応黙っておけねーなと思って。
そう言いながら、
申し訳なさそうに、
下を向く蓮哉。
「もー、蓮哉」
あたしはそう言って、
蓮哉の頬をつまんで上を向けさせる。
痛い、とぼやく蓮哉を無視して。
あたしは目の前の愛しい人に、
少し背伸びをして、
キスをした。