めぐりあい(仮)






手を繋いで。




「部屋戻ったら、服洗おうね」




「そうだな」




ホテルまでの道を歩く。





「夕飯どうしようか」




「食いたいもん、食わせてやる」





並んで歩いてるだけなのに。





「車、直るかな」




「後で連絡来んだろ」




ひたすら、右側に、


ドキドキする。


ホテルについて、


買ったものを部屋に置くと、


その足で近くにあるお店に


夕飯を食べに行った。


不思議と食欲が出て来て、


まだ食うの?って言われるくらい、


食べてしまった。






「あー、お腹いっぱい」




「あんだけ食えば上等だろ」





部屋に戻ってベッドに座る。


2つ並んだベッドに、


それぞれ腰をかける。





「何か、広すぎると寂しいね」





いつも2人でいる蓮哉の部屋は、


すごく広いけど、


2人でいるには丁度いい広さ。


だけどこの部屋は。


少し。





「何だ、お前」





少しだけ。





「珍しいこともあんだな」





広く、感じたの。





「な、な、何…、どうしたの」





蓮哉は急にあたしの隣に座ると、


あたしの髪を撫でて、


顔を近付けて来る。





「何が?」




「ちょっと飲み過ぎたんじゃない?」




「飲んでねーよ」





嘘付け。


どんだけ飲んだと思ってんの。


そんなことを心で感じながら、


少し動揺する。


だって、だって。





「妃名…」




「蓮…近っ…」





キス、する距離。


あたしと蓮哉が近づいた時、


向こうのベッドで蓮哉の携帯が鳴った。





「け、携帯…鳴ってますよ…」




「あほ面」





そう言ってでこピンすると、


蓮哉は携帯を取りに、


あたしの元を離れた。


距離が離れて。





「あ、分かりました」





安心したと共に、


少し寂しいと思った。





「俺、ちょっと車の所、行って来るから」




「じゃあ、あたしも…」




「いい。お前、先風呂でも入ってろ」




すぐ近くだから、1人で行ける。


蓮哉はそう言って、


部屋を出て行った。






「お風呂…入ろうかな」




部屋に備え付けられた浴衣と、


さっき買った下着を持って、


大浴場に向かうことにした。


駐車場まで少し距離あるし、


蓮哉が戻る前に帰って来れるよね。


あたしは、部屋の鍵を閉め、


1人で大浴場に向かった。





「わー、広い」





人がほとんどいなくて、


ほぼ貸し切り状態。


大理石の様な床を歩いて、


色々なお風呂に入る。


久しぶりに入る温泉に、


あたしの中の何かが


抜けた様な気がした。


今まで溜めこんでいた何かが、


すとんと、落ちた。


気分が軽くなった。


来てよかった。


本当にそう思った。





「のぼせる…上がろ」




真赤になった体をタオルで拭き、


備え付けの浴衣を着て、


部屋に向かった。


そろそろ蓮哉が戻って来るだろうか。


車大丈夫だったかな。


蓮哉もお風呂、


早く入らせてあげないと。


なんて思ってたのに。





「いつまで入ってんだよ」





すでに浴衣を着て、


部屋の前で待ってる


蓮哉がいた。






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