めぐりあい(仮)
「で?で?」
「で…って。うん、そういうこと」
あの後、洗濯して、
乾燥させて、次の日に
直った車に乗って家に帰った。
しばらくしてから、
放課後に遊びに来てくれた
鳴海に、細かく話すことに。
「やー、ついにか」
「そう思うよね」
鳴海がついに、って思うんだから。
蓮哉もそう思ってんだろうな。
「あ、そうだ。ねー、鳴海」
「何?」
「文化祭の時に、言ってたこと。あれ、どうなったの?」
文化祭?と、
首を傾げて、
何のことか分かっていない鳴海。
「ほら、千秋さんと付き合ってんの?」
「あー、あれか」
千秋さんの名前を出すと、
鳴海は少し恥ずかしそうに
笑って。
まだ付き合ってないと答えた。
「え!まだ付き合ってないの?」
「うん」
「何で?」
「付き合って、って言われてないもん」
そう言って、
お菓子を一口頬張った。
でも、この感じはきっと。
上手くいくのではないかと。
「あ、電話…」
突然あたしの携帯が鳴り、
慌てて電話に出る。
「もしもし、蓮哉?」
『今、家?』
「うん。そうだよ?」
『そこにさ、鳴海ちゃんいる?』
蓮哉の名前を出すと、
鳴海はあからさまに嫌な顔をする。
何で、蓮哉の口から鳴海の名前が?
「いるけど…、どうかした?」
『千秋が話したいらしくて』
何だか訳がありそうな雰囲気が、
ひしひしと電話の向こうから
伝わってくる。
「鳴海…、千秋さんが」
「いい。嫌だって言って」
「でも…」
「いいから。切って」
さっきまで笑っていた鳴海が、
嘘みたいに悲しそうで。
「蓮哉、ごめん。ちょっと無理みたいで」
『夜、行くから。また連絡する』
蓮哉はそう言うと、
少し残念そうに電話を切った。
「切れちゃった…」
「ごめん…妃名子」
鳴海は、突然泣きそうな声で、
あたしに謝った。
「鳴海…どうしたの?何かあった?」
「あたし、千秋が好きなの」
鳴海は、千秋さんを、
千秋と呼び捨てにした。
あたしはそれを聞いて、
変に嬉しくなった。
「でもね、千秋、他に好きな人がいるんだ」
「え…好きな人?」
千秋さんに限って、
そんなことないと思う。
あんな優しくて誠実そうな人が、
鳴海にも手を出して、
他の人にもなんて。
「あたし、見たの。綺麗なお姉さんと、街で歩いてる所」
「人違いなんじゃないの?」
「人違いなんかじゃない。絶対千秋だった」
そう言い張る鳴海に、
あたしはかける言葉がない。
「でも、千秋さんのこと、好きなんだよね?」
「今までに感じたことないくらい、すごく好き」
ポロポロと涙を流して、
千秋さんを好きだという鳴海を、
あたしは救いたいと思った。
「あたし、そろそろ帰るね」
「あ、うん。来てくれてありがとうね」
外まで鳴海を見送って、
あたしは蓮哉に連絡をした。
丁度仕事を終えた蓮哉は、
すぐ行くと言ってくれた。