めぐりあい(仮)





「ご飯食べた?」




「今終わった所だから」




車に乗って、


蓮哉の家に向かう。


途中スーパーで材料を買い、


家でご飯を作ることにした。





「お母さんに泊まる連絡しとかないと」




「おー、しとけ」





お泊りの荷物と、


スーパーで買った材料を、


蓮哉は部屋に運んでくれた。


一緒に作り、


リビングで座って食べる。





「鳴海、泣いてた」




「鳴海ちゃんが?」





ずっと鳴海と一緒にいるけど、


あたしのために泣いてくれたことは


あったものの、自分のことで


泣いた彼女を初めて見た。





「千秋さんのこと、すごい好きだって」





泣くほど好き。


今鳴海は、きっと好き過ぎて、


辛いんじゃないかな。






「でも、千秋さん、他に女の人いるの?」




「やっぱ、鳴海ちゃん、そう思ってたのか」




「え…?」





はぁ、と溜め息をはく。


蓮哉は少し考えてから。





「鳴海ちゃん、千秋の連絡避けてるみたいで」




「…そうなの?」





それから蓮哉に話を聞いた。


さっき電話してきた理由は、


鳴海が千秋さんの電話を無視していて、


どうしても話がしたかったから。


鳴海が思っている、


千秋さんの彼女は、


彼女ではないということ。


彼女ではないけれど、


形的には。





「千秋の家、有名な家で」




「有名?」




「病院の院長の息子だっけか。ま、あいつは建設関係が好きだから、跡は継いでないんだけど」





院長の、息子。


初めて知った。


千秋さんって、お金持ちなんだ。





「だから、何て言うか…政略結婚させられそうならしい」




「政略結婚?千秋さんが?」





この時代に、


まだそんなことをする人が。


そんなことをする家があるんだ。





「何度も断ってるらしいけど。向こうの女が、千秋のこと気にいってるんだってよ」




「そんなこともあるんだね…」





2人でしんみりしながら、


ご飯を食べる。


千秋さんがそういう家柄だからって。


あたしは何も変わらない。






「だけど、あたし、そんなの嫌だ」





鳴海が千秋さんを好きで。


千秋さんも鳴海のこと。





「千秋さん、鳴海のこと、好きなんだよね?」




「面白えくらい、鳴海ちゃんのこと好きだって、あいつ」





千秋さんも鳴海のこと、


好きなんだったら。


お互い好き同士なんだったら。






「幸せになってほしい。2人で」





どうにか出来るなら。


あたしがどうにか出来るなら。






「蓮哉…」




「やってやるしかねーだろ」




「うん」





あたしが鳴海を救う。


あたしにしてくれたみたいに、


鳴海を幸せにしてあげたい。


鳴海が好きな千秋さんと、


2人が思い描く幸せを。


作る手伝いがしたい。






「とりあえず会わせるしかねーよな」





「うん。鳴海、意地っ張りだから、きっと電話出られないんだと思うの」





待ってて、鳴海。


あたしがどうにかしてあげるからね。


何としてでも、


鳴海の口から千秋さんに、


好きだって、


伝えられるようにするからね。







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