めぐりあい(仮)
「蓮哉、行き先は?」
「分かんねぇ」
分かんないって。
どうしたら…。
「ね、何?どうしたの?」
「…鳴海、あのね」
黙ってるわけにもいかない。
あたしはゆっくり落ち着いて、
鳴海に事情を話した。
「降ろして」
「ねえ、鳴海。ちゃんと千秋さんと…」
「いいの!降ろして!蓮哉さん、ここで車止めて下さい」
蓮哉は困った様子で、
ルームミラーを覗く。
あたしは鳴海をなだめようとするも、
鳴海は叫び続けて止まらない。
「鳴海、落ち着いて」
「千秋と話すことなんてない!もういいの!」
頑なに拒み続ける。
どうしたらいいの。
「まだ出ない?」
千秋さんに電話をかけている
蓮哉は、少し怒った顔で頷いた。
何やってんだ、あいつ。
なんて愚痴をこぼしながら。
「鳴海、ちゃんと自分に向き合おうよ」
「嫌。無理」
「鳴海、今しかないんだよ?千秋さん、どっか行っちゃうかもしれないんだよ?」
今会わないと後悔する。
好きなら好き同士が、
一緒にいないとだめだよ。
泣きながら少し震える鳴海に、
何度も説得する。
「鳴海…かけてみよう、電話」
「出なかったら…どうするの」
「またかければいいじゃない。好きなら、諦めないでよ」
鳴海が諦めるなんて、
そんならしくないことない。
「ほら、携帯出して」
鳴海はもう抵抗することせず、
黙って携帯を取り出した。
おぼつかない手で、
千秋さんの番号を出す。
「怖い…」
「大丈夫、絶対繋がるから」
確信は何もないけど。
そんな気がした。
鳴海はあたしの手を握りながら、
携帯を耳に当てた。
「出るかな…」
「大丈夫。大丈夫」
少しして。
「あ…もしもし」
鳴海がそう言った。
繋がった。
ずっと繋がらなかった、
千秋さんとの連絡が。
やっと、繋がった。
「千秋…どこに、いるの?」
車内が静まり返る。
「ホテル大宮…」
ぽつりと呟いた名前。
「蓮、大宮。ホテル大宮…」
そう伝えると、
蓮哉は方向を急に変えた。
ホテル大宮は、ここらじゃ
有名な高級ホテル。
きっと、そこで、
千秋さんは相手の家族と会うんだ。
「分かった」
そう言って電話を切った、
鳴海の目からは。
受け取りきれないくらいの、
大量の涙が零れ落ちた。