めぐりあい(仮)





「え、ちょっと」




あたしは?


そういう意味で声をかけると。





「何?」





蓮哉のお前は別に答える


必要ないだろっていう目に、


あたしは負け。





「何でも…ないです」





答えを出すことなく、


あたしは行くことが決定されていて。


悠太郎の家で、


あたしと鳴海と、蓮哉と千秋さん。


なんて、変なメンバーなの。





「じゃあ着替えたら駐車場集合な」





朝と同じように更衣室に分かれ、


服を着替えることに。


あたしと鳴海はシャワーを浴び、


体を拭いて、服を着替える。


あたしはその間、一言も発さず。





「妃名子、大丈夫?」





「えっ、何が?」





「木嶋さんって、悠太郎さんでしょ?」





少しの沈黙の後、


こくりと頷くあたしに、


鳴海は小さく溜め息をついた。






「本当は行きたくないんじゃないの?」





「行きたくないっていうか…」





正直言うと、


会うのが怖い。


会ったら何話そうとか。


どう接そうとか。


何だか考えられなくて。






「ね、1つ聞いていい?」





「うん?」





荷物をまとめ、


更衣室を出る前。






「妃名子、蓮哉さんのこと、好きなの?」




「…え?」





鳴海は唐突に、


あたしにそう質問した。


本当に淡々と言った。


あたしが、蓮哉を、好き?






「何、言ってんの…」




「最近の妃名子、すごく楽しそうだし」





最近のあたしが、


楽しそう?





「さっき海の中で2人がナンパされてるの見た時の妃名子の顔、すごい怒ってたよ」





気付いてた?


そう言われて、


全く意識してなかったなと思った。


だって、でも。


あたしが蓮哉を好きになるわけ、


ないでしょ?


あんな強引で、勝手で…。


それで、えっと。





「あたしにはそう見える」





妃名子が蓮哉さんを好きだって。


そう言うと、とりあえず出ようと


更衣室を先に出て行く鳴海。






「そんな…まさか、」





あたしは自分の心に問いかけ、


そんなわけないと首を振った。


どう見たら、蓮哉を好きだと


思えるのか不思議だよ。


本当…不思議だよ。






「鳴海、待って…」





そんなわけない。


そんなわけない。


そんなわけ…ないと思う。








< 50 / 152 >

この作品をシェア

pagetop