めぐりあい(仮)
バーベキューがあった日から、
1週間が経った。
悠太郎と終わりにしようと、
決めたはいいものの。
なかなか自分から連絡出来ず、
悠太郎からの電話を待ってしまった。
そして、最後に会ってから
1週間経った今日。
久々にディスプレイに、
悠太郎の名前が出た。
「もしもし」
辺りはうっすら暗く、
時計を確認すれば18時過ぎ。
『妃名子?』
弱々しい声であたしの名前を
呼ぶと、少し緊張しているのか
ほっと一息ついている悠太郎。
『連絡するの遅くなってごめん』
「あたしこそ。ごめんね」
『これから時間あるかな?』
この人とは終わってしまう。
そう思うと、
寂しさでたまらない。
「うん、あるよ」
『今会社なんだ。会社まで来れるかな?』
「分かった。すぐ行くね?」
悠太郎は、自分のオフィスを
細かく説明し、
また分からなかったら電話して、
と言い、電話を切った。
あたしはすぐに支度をし、
飛び出すように家を出た。
頭の中は、悠太郎に何て言おうか。
そのことばかりで。
最初は軽かった足が、
だんだん重くなっていくのが分かる。
会いたくない。
会ったら終わってしまう。
でも、終わるの。
終わらせるって、決めたでしょ。
弱気な自分に鞭を打って、
悠太郎の会社の中に入った。
「すいません、木嶋の用で来たんですけど」
さっきの電話で言われた通り、
受付の人にそう言うと、
お姉さんは何も疑うことなく、
中へ通してくれた。
エレベーターで5階に上がり、
降りて右に行った突き当りの場所。
もうみんな帰ったのか、
灯りがほぼ消えている。
ついているのは、
突き当りのオフィスの中の、
少し広めの個室の中だけ。
「失礼しまーす…」
控え目にオフィスのドアをノックし、
ドアを開ける。
ここが悠太郎のオフィスか。
もしかしたら、蓮哉も千秋さんも
ここで働いてるのかな。
そんなことを考えながら、
奥の個室を覗く。
中にはパソコンと睨めっこしている
悠太郎がいて。
コンコンとノックすると。
「妃名子?」
と言う声が聞こえて来た。
立ち上がった悠太郎は、
あたしを見つけて嬉しそうに
微笑んだ。
「あたしじゃなかったら、どうするの」
中に入ってあたしの第一声。
もしこれが恵莉香さんだったら、
どうするのよ。
そう言って少し怒ると、
ごめんって言いながら
入口に佇むあたしを抱きしめた。
「苦しいよ、悠太郎」
「うん。ごめん」
あたしの肩に顔を埋める悠太郎は、
どこか弱々しくて辛そうで。
「悠太郎…」
「この間、辛くなかったか?」
辛そうな顔で、あたしが
辛くなかったか心配してくれている。
あたしからしたら、
貴方の方が心配です。