めぐりあい(仮)
「妃名」
「あ、違うか。愛し合うことが、難しいんだね」
人を好きになって、
悠太郎を想うようになって、
いつもいつも感じていた。
自分が好きな人と、想い合うのは。
愛し合うのは、滅多にないことで。
人を愛せることは。
愛されることは、すごく
幸せなことだって。
悠太郎と出会ったばかりのあたしは、
そう思ってた。
だけど、恵莉香さんの存在を知って、
美緒ちゃんの存在も知って、
大切にするべきものがある人だって、
改めて知って。
「やっぱり頑張れないかもしれない」
一緒にいるべきじゃないと思った。
夢を見ていたのね、あたしは。
「所詮、あたしは悠太郎といるべき人間じゃない」
悠太郎。
あなたはあたしじゃない人と、
いるべきなのよね。
それを邪魔してるのは、
間違いなくあたしなんだね。
そうなんだよね。
「そうだよね、蓮…」
声が震える。
今にも現実が押し迫って来る。
別れの時が来ているんだ。
そう感じた。
嘘を付かせたくない。
あたしのせいで嘘を付かれるくらいなら、
正直に話された方がましだ。
もう悠太郎とはいられない。
こんな最低な女。
「キスして……」
めちゃくちゃになれば
いいと思った。
「蓮哉、お願い。あたしにキス、して…」
それと同時に、
蓮哉に触れたいと思った。
今日はやっぱりおかしい。
おかしいなんて、言い訳かもしれない。
だけど今日はなぜか、
蓮哉に触れたい。
「蓮…」
そう小さく言うと、
頭まで被っていた布団が、
ゆっくりめくられて。
「んっ…」
真っ暗闇の中、
蓮哉はあたしにキスをした。
何も言わず、何も聞かず、
何度も何度も唇を重ねて。
部屋に響いたのは、
あたしの微かに漏れる声だけ。
「れ…ん、」
蓮哉はあたしの服の中に、
そっと手を入れると、
制止を簡単に交わし、
胸に手を当てた。
ただでさえ蒸し暑いのに、
蓮哉のせいでより一層
高まっている体温。
「蓮哉…待って、」
「何?」
低く、少し掠れている蓮哉の声が、
あたしの奥の何かを動かした。
蓮哉はあたしの体を浮かせ、
背中に手を回すと、
ブラのホックを慣れた手つきで
外し、服と一緒に、
スルスルと脱がせる。
「あっ…」
「お前、いい声出せんじゃん」
「何言って…ん、」
あたしの上半身が露わになった所で、
蓮哉は自分の服も脱ぎ始めた。
暗闇で見る蓮哉は、いつもよりも、
ずっと綺麗でかっこよくて。
「蓮…」
いけないのは分かってるけど、
すごくすごく欲しくなる。
そんなあたしに。
「ごめん、妃名子」
蓮哉は軽くもう1度キスをして、
あたしの上から体を退かした。
そして強引に脱がせた服を、
あたしに着せると、
薄い布団で体を全て巻いた。
ブラのつけ方知らねーから、
これで我慢しろなんて言って。