めぐりあい(仮)







「もういい。行くぞ、妃名」




「え、もう行っちゃうんすか?」




「ねー、綿あめ買ってない」





ここに来た目的でもある、


綿あめをまだ手にしていない。


それにこのお兄さんといる


蓮哉も、なかなか新鮮でいい感じ。






「蓮哉さん、代わって下さいよ」




「お前の仕事だろ。変な形作るサービス増やしやがって」




「それが結構人気なんすよ」





お兄さんはそう言ってる間にも、


新しい綿あめを作り、


お客さんに渡していく。





「あたし、蓮哉の作った綿あめがほしいな」





なんて言ってみると。


だよね、とお兄さんが蓮哉を


引っ張り、屋台の中に入れる。


蓮哉は諦めたように腕をまくり、


慣れた手つきで綿あめを作り始めた。


普通の白い、だけど大きい綿あめ。






「これで満足だろ」





「すっごい美味しい」






屋台の中から綿あめを


渡す蓮哉を見て、


実際働いている所を


見てみたかったなと思う。







「じゃあ俺ら行くから」





「妃名子、今度は3人で遊ぼうね」






お兄さんは笑顔で手を振り、


あたしたちを見送ってくれた。


屋台を離れて数分すれば、


もう綿あめはなくなっていて。






「あのお兄さん、仲良いの?」





「1つ下の後輩。大久保 健斗」





「ふーん、慕われてるね」





「いつもあんな感じでうるせーの」






とか言いつつ、


健斗くんとの思い出を


楽しそうに話す。


千秋さんとも仲がいいのか、


しょっちゅう3人で


遊んでいたみたいで。






「何で今日は屋台なかったの?」




「別に、何でもいいだろ」




「だってさっき押しつけて、みたいなこと言ってたし」




「毎年俺は屋台で、健は花火の方だったわけ。でも、今年は屋台がいいってうるせーから、変わってやっただけ」





だから俺は休みなんだと、


押しつけたわけじゃないと。


念を押して説明するから、


納得せざるを得なくて。






「千秋も花火、準備してんぞ」





「そうなの?じゃあ、鳴海と祭とかじゃないんだね」





「いや、花火、特等席で見るらしいぞ」






花火の準備する特典は、


特等席で見れることらしく、


何だか少し羨ましそうで。







「もう何も買わなくていいのか?」





「うーん、あ、あそこ見たいかも」






ふと頭に過ぎったのは、


お母さんのこと。


今日は仕事がないからと、


きっと1人で家にいるから。


なんかお土産に、と、


屋台で売っているネックレスを


手に取った。









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