めぐりあい(仮)
「遊んでるって?女の人とってこと?」
「うん。仕事終わる度に飲みに行ってて」
あの蓮哉が、
女の人と遊んでる?
全く信じられなくて、
信じたくなくて。
「何で…そんなことに、なったんですか?」
やっとの思いで出た言葉。
いつから?
どうして?
そんなことが頭をめぐる。
「本当にここ最近。原因は…、」
「原因は?何ですか?」
前のめりで聞いてしまう。
だって原因が分かっているなら、
どうにか出来るかもしれない。
なのに原因は教えてくれず、
代わりに。
「蓮哉を止められるのは、妃名子ちゃんだけだと思う」
そんなことを言われた。
止める?あたしが?
「ごめん、俺まだ仕事残ってるから戻らないと」
「あ、じゃああたしたちも帰ろっか」
3人で席を立ち、
お会計を済ませて外に出る。
日が沈むのが早くなってきた
この頃は、6時前なのにもう真っ暗。
「蓮哉は、まだ会社にいますか?」
「いや、いないと思う。先に帰ったと思うよ」
「そう、ですか…」
またね、と会社に向かって
帰って行く千秋さん。
あたしと鳴海は、
家に帰るために歩道を歩く。
「蓮哉さんが遊んでるって、信じられないね」
「うん。全然信じられない」
「でも何があったんだろうね」
「…分かんない」
様子がおかしいと思い始めたのは、
祭の日の夜だった。
だけどその前から何かがあったのなら、
あたしの知らない何か。
だけどあの日の夜に何かがあったなら、
あたしと離れたあの1時間で
何かがあったなら。
もしかしたらあたしが、
何かしたのかもしれない。
「ねー、鳴海」
「ん?」
「蓮哉に会いたいと思ってる、あたし」
「うん」
いいと思う。
鳴海は静かにそう言った。
「あたしも千秋さんに会いたいと思うよ」
「鳴海も思うんだね」
「妃名子の気持ちと同じだよ」
あたしの気持ちと、同じ?
どういうこと?
「今度勇気出して会いに行ってみなよ」
「蓮哉に?」
「うん。会わないと、分かんないじゃん」
会わないと分かんない。
電話じゃ、メールじゃ、
何も伝わらない。
「今度行ってみる。会ってくる」
頑張っておいで、と
背中を押される。
蓮哉は今何を考えてるのか、
それが知りたい。
ただそれだけが分からない。
だからそれを知るために、
会いに行く。
あたしはそう決めた。