めぐりあい(仮)
現れたのは予想通り
蓮哉と。
そして綺麗なお姉さん。
お姉さんは嬉しそうにして、
蓮哉の腕に、自分の腕を絡める。
目の前の状況に、
動揺を隠せない。
「蓮哉…」
目の前にいるあたしに気付くと、
驚いたように目を丸くする蓮哉。
そして隣のお姉さんを、
自分から引き離す。
「何、この子。高校生じゃない」
お姉さんはあたしを、
じっくりと見つめ、
少し鼻で笑った。
「何?用?」
祭の日以来蓮哉と会った。
予想もしていなかった。
こんなに冷たいなんて。
「用っていうか…あの、」
「先、中入ってろ」
「はあい」
蓮哉はお姉さんに、
自分の家の鍵を渡すと、
お姉さんはあたしの横を
軽やかに通り過ぎて
家の中に入って行く。
甘い香りがやけに鼻につく。
「ずっと待ってたわけ?」
「うん、でもさっき来たっていうか」
「何で?」
まっすぐあたしを見る蓮哉の目に、
いつもの優しさが見えない。
「あの人、彼女?」
「違うよ」
「好きな人?」
「別に好きでもない」
あたしの知ってる蓮哉じゃない。
いつもの蓮哉は、
どこにもいない。
「じゃあ…何で、」
「妃名に関係ないから」
久しぶりに名前を呼ばれ、
急にこみ上げる涙。
その時蓮哉に電話がかかり、
携帯を耳に当てる。
一瞬で気がついた。
携帯に、あたしとお揃いと
キーホルダーがついていない。
「じゃ」
電話を切った蓮哉は、
少しため息を吐いて
再びあたしを見る。
「とりあえず帰れ」
「嫌…」
首を振るあたし。
今帰ったら、
もう2度と会えないと思った。
蓮哉が離れて行く。
そう感じた。
「何で、ないの…」
「は?」
「キーホルダー…」
ほら、とあたしの携帯を見せる。
一緒に買ったじゃない。
少し恥ずかしそうに、
付けてくれたじゃない。
あの時、
"妃名が外してたら、知らねえからな"
って、言ったじゃない。
「あ、それ?」
ふっと鼻で笑ったかと思うと、
急に近付いてあたしの携帯を取り。
無理矢理引きちぎって壊し、
外に投げ捨てた。
「…蓮、哉、」
「もう必要ねえだろ」
あたしに携帯を押し付けると、
何も言わずに通り過ぎようとする。
あたしは必死に捕まえ、
行かないでと叫んだ。