おじさまに、ドン!
ハッピーな日
ちろ、と自分の唇を舌で軽く舐める寛治さん。無駄に駄々漏れな、その色気をなんとかして欲しい。
恨みがましい目で睨み付ければ、寛治さんはクスッと小さく笑ってあたしの腰を抱いて支えてくれた。
「オレもさ、最初はどうかと思ったよ。セーラー服着た相手に欲情した瞬間、人間辞めたくなったね」
「セーラー服に……よ、よくっ!」
「そ。くるみが中学生の時にはもう落ちてた。けど、おまえにぶつけるつもりはなかったんだけどな」
がしがし、と頭を掻きながら話すのは困った時のクセだ。だけど、と寛治さんはちゃんと言ってくれた。
「くるみ、大学を卒業したら結婚しよう。本当の家族になって欲しい」
そしていつの間にかあたしの左手薬指には、学校にも着けていけそうなシンプルな指輪がはめられていて。こうして彼が本当に、大切にしてくれたからこそ今も手を出さないとやっと解った。
ちゅっ、と軽い音がして唇に柔らかい感触がして。キスされたと気付いた時には、顔が真っ赤だったに違いない。
「くるみの将来は、オレが全部予約な」
そんな子どもっぽい事を言う寛治さんに笑えたけど。
マリカにバカップルと白い目で見られるのは、そう遠くない未来の話――。