おじさまに、ドン!
寛治さんの豹変!?
あたしが背を向けようとした瞬間、だった。
肩が掴まれたと思ったら、彼の身体ごと壁に押し付けられてたのは。
バン、と寛治さんの拳が壁を叩き、ビクッと体が跳ねた。
恐る恐る彼の顔を見上げれば、そこにあったのは初めて見るような寛治さんの顔。燃え立つ炎のような、ギラギラとした目をしてて。ごくりと息を飲み込んでしまった。
「冗談じゃねえ、おまえばっか苦しかっただと?こっちの気も知らねえで、よく言いやがる」
普段は飄々として何を考えてるのかわからないけど、基本的にあたしには紳士的に接してくれてきた。“優しいおじさん”という仮面をかなぐり捨てた寛治さんは、あたしの開いたシャツの胸元に指を軽く這わす。
「……っ」
「これだけ気合い入れてるんだから、当然その先も期待してんだろ、くるみ」
初めて、呼び捨てにされた。耳元で囁かれた艶めいた声と吐息。それだけで、膝に力が入らなくなってガクガクと足が震える。
クスッ、と寛治さんが意地悪な笑みを口元だけに形作る。
「おやおや、くるみにはこれだけで刺激が強かったかな?」