私のことは、ほっといてください
.。.:*・゜+.。.:*
昭和っぽさが漂う、レトロな喫茶店の隅っこ。ここに私の特等席がある。

あ~。やっぱ隅っこって、落ち着く

コーヒーをひと口飲んでカップをソーサーに戻す。それから、さっき買ったばかりのコミック本を鞄の中から取り出した。

今一番お気に入りの少女漫画、『ラブきゅん』。

今日は待ちに待った新刊の発売日。仕事を終えるやいなや書店に直行。その後、すぐそばにあるいきつけの喫茶店に入って、今に至る。

私、楠木琴子(くすのき ことこ)は、入社2年目のOL。歳は24。ストレス解消法は、少女漫画を読むこと。しかも重度にハマってる。

ええ、ええ。地味な趣味だっていうのは、重々承知しております。

会社帰りにデートするような相手もいない。そもそも出会わない。基本的にインドアだし、コンパとか飲み会とか苦手だし。

そんな私にとって、擬似恋愛を体験できる少女漫画は、最強の癒しアイテムなの。

って、冷静に考えると、かなり痛い女だな、私って。

でもいいの。

私のことは、ほっといてください。

こうして会社帰りに、静かな喫茶店の片隅で漫画を読むことは、私にとっては癒しであり至福の時なのだから。

< 1 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop