私のことは、ほっといてください
「たぶん、きっかけはオレの歓迎会。楠木さん端っこの席に座って、みんなの注文とか全部受けてたじゃん? あれ見てて、気が利く子だなぁって……」

「そ、それは……」

恥ずかしさで顔が熱くなる。

「違うの。私、気が利くとか、そんなんじゃなくて。ただ、端っこの席が落ち着くからそこにいただけで」

「だよね」

「え?」

新見くんはフッと笑う。

「後から気づいた。実は、この店、オレのいきつけでもあるんだよね。ここにくるといつも、隅に楠木さんがいて」

「えっ……。じゃ、いつも見られてたの?」

「ああ。けど、すげー真剣な顔してるから声かけづらくてさ。最初は小説でも読んでんのかなって思ってた。けど、まさか少女漫画だとは」

クックッと肩を揺らして笑う。

「まぁ、お互い共通の趣味があったっつーことで、こうして近づけたわけだけど。でさ。そろそろオレら、つきあってもいいんじゃないかな?」

「えっ……だって。新見くん、冬になったら公園でご飯食べるのやめようって……」

「うん。だから、堂々と社食で食ったらいいじゃん。ふたりで」

「それって……」

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