私のことは、ほっといてください
その夜、仕事を終えた私は書店に寄った。

以前から目をつけていた、絶対に泣けると評判の漫画、全10巻を大人買いする。
なんだかどうしようもなく泣きたい気分だった。


購入した漫画を手に、馴染みの喫茶店に入る。そしていつもの隅っこの席へ。
さっそく読書を開始。

中身は評判以上だった。1巻にして、私の目はすでに充血していた。油断したら今にも涙がこぼれそう。

ヤバい。本気泣きに突入する。

そう思って、スンと鼻をすすったその時。

「ここ、いい?」

聞き覚えのある声がして、見ると、新見くんが隣の席に座ろうとしていた。

イスに腰掛けた彼は、体をこちらに向ける。

「あのさ。やっぱちゃんとしとこうかと思って」

新見くんの言葉の意味がわからず、私は小首をかしげる。

「オレ、楠木さんのこと、好きなんだけど」

「えっ……」

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