恋のキッカケ
「高木、なにしてるんだ?」
「安田! シッ」
私の背後に現れた安田に向かって、口の前で人差し指を立てた。
「なんだよ、一体。あ、あれって、営業の秋山とデザインの広瀬だろ。なるほどね」
安田は私を盾にして、中の様子を見ながら言った。私も釣られて、また二人を見てしまった。
「で、高木は覗きか?」
顔を後ろに向けて「違うわよ。コーヒー買いに来たら、あれで」と訂正をする。
「別に隠すなよ。思わず覗いちゃいましたって言っていいぞ。この状況なら誰でも覗くだろ」
「だから違うってば」
急に「あ」と安田が言った。
「え?」
思わず二人を見ると、キスの真っ最中だった。いい大人である男と女が至近距離で見つめあえばそうなるよね。
「ほら、安田、行くよ」
体を反転させて、安田の方を向いた。
「あ、同じ」
安田がこっちをじっと見つめてくる。なにを言っているのか分からない。なにが同じ? 安田の顔を見てもなにも言わない。なんだっていいやと思い、もたれていた壁から体を離したとき、顔のすぐ横に大きな手が現れた。そして反対側は、もともと手をついていたらし。包囲され、逃げられない。つまり秋山さん達と同じだ。
「えっと、この手を退かしてもらえないかな」
「無理」
いつもは飄々とした顔でいるのに、今は熱い視線を感じる。それに耐えきれなくなって、視線を外そうとした時だった。急に安田の顔が近づいてきた。ぎゅっと硬く目を閉じる。すると、額に柔らかくて温かいものが触れた。少し目を開けると、安田ののど仏とパーカーの襟ぐりが、すぐ目の前にあった。
唇が離れると、ものすごく優しい顔で私の頭を雑に撫でた。
「帰るか。あっちが出てくる前に」
「あっ、うん」
秋山さん達はずっとキスを続けているらしく、唇と唇だけが出せる独特な音が聞こえてきた。
「安田! シッ」
私の背後に現れた安田に向かって、口の前で人差し指を立てた。
「なんだよ、一体。あ、あれって、営業の秋山とデザインの広瀬だろ。なるほどね」
安田は私を盾にして、中の様子を見ながら言った。私も釣られて、また二人を見てしまった。
「で、高木は覗きか?」
顔を後ろに向けて「違うわよ。コーヒー買いに来たら、あれで」と訂正をする。
「別に隠すなよ。思わず覗いちゃいましたって言っていいぞ。この状況なら誰でも覗くだろ」
「だから違うってば」
急に「あ」と安田が言った。
「え?」
思わず二人を見ると、キスの真っ最中だった。いい大人である男と女が至近距離で見つめあえばそうなるよね。
「ほら、安田、行くよ」
体を反転させて、安田の方を向いた。
「あ、同じ」
安田がこっちをじっと見つめてくる。なにを言っているのか分からない。なにが同じ? 安田の顔を見てもなにも言わない。なんだっていいやと思い、もたれていた壁から体を離したとき、顔のすぐ横に大きな手が現れた。そして反対側は、もともと手をついていたらし。包囲され、逃げられない。つまり秋山さん達と同じだ。
「えっと、この手を退かしてもらえないかな」
「無理」
いつもは飄々とした顔でいるのに、今は熱い視線を感じる。それに耐えきれなくなって、視線を外そうとした時だった。急に安田の顔が近づいてきた。ぎゅっと硬く目を閉じる。すると、額に柔らかくて温かいものが触れた。少し目を開けると、安田ののど仏とパーカーの襟ぐりが、すぐ目の前にあった。
唇が離れると、ものすごく優しい顔で私の頭を雑に撫でた。
「帰るか。あっちが出てくる前に」
「あっ、うん」
秋山さん達はずっとキスを続けているらしく、唇と唇だけが出せる独特な音が聞こえてきた。