いん・ざ・ぼっくす
「風邪ひいてても無茶しちゃう頑張りやの美野里さんへ……」

そう言うと、垣内はカエルの口を私の手のひらの上でパカっと開いた。すると、いつの間に仕込んだのか、中からは、のど飴が落ちてきて、手のひらに着地する。

「まぁ、気休め程度ですけど。ないよりはマシでしょ?」

そう言ってまた優しく微笑むもんだから……。

ボンッて、私の熱は急上昇。

もう、なんなのこの子。いちいち私のツボをついてくる。

「美野里さん、大丈夫っすっか? 顔、真っ赤ですよ? 熱上がってるんじゃないですか?」

「う~……」

私は彼の鼻を指でつまんでひっぱった。

「ムカつく。誰のせいでこうなったと思ってるのよ」

「はひっ?」

スクっと立ち上がり、今度こそダンボールの外に出る。

スタスタと5歩ほど歩いてから振り返る。

箱の中にいるのは、キョトンと小首をかしげる愛玩動物。この世にこれ以上可愛いものがいるだろうか。今、わりと真剣にそう感じた。

「じゃ、お先」

再び彼に背中を向けて、今度は早歩きをする。

廊下に出て、パタンと閉じたドアにもたれかかった。

ヤバい。顔がにやける。
油断したら緩みそうになる頬をペチペチと叩いて気合注入。

熱い。熱い。
この熱は、風邪によるものなのか。
それとも私はすでに恋の病にかかってしまったのか。

それは、神のみぞ……知る。

【END】
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