いん・ざ・ぼっくす
***

「美野里さんて、『隙がない系女子』ですよね」

「は?」

垣内からの突拍子もない言葉に、私は首をかしげる。

「いかにもガード堅そうっていうかー。学生の頃、スカートの下に黒パン履く派でした?」

この男は何を言ってんだ。そんな気持ちを込めて、ヤツを睨んだ。眉間にはさぞかし深い皺が寄っていたことだろう。

私――相羽美野里(あいばみのり)は、女性向け雑貨を作っている会社で働く28歳のOL。
グループリーダーという立場で、少人数ながら部下もいる。垣内はその中のひとりだ。

廊下の端にある、第五会議室。普段あまり使われることのないこの場所は、倉庫も兼ねていて、部屋のあちこちにダンボールが散乱している。
そんな部屋で、私達ふたりは新商品の開発について打ち合わせをしていた。
だけど、これといったアイデアが浮かばず、煮詰まっていたところ、垣内がふいにさっきの台詞を口にしたのだ。

「ぶー。はずれ。黒パンどころか、スパッツ派だし。なんなら中学の頃なんて、スカートの下にジャージ履いてたし」

「えー! マジっすか。それ、鉄壁じゃないっすか! スカートの中は、やっぱ、可愛いパンツ履いてて欲しいじゃないですかー。ああ……男のロマンが~」

垣内が心底残念そうに両手で顔を覆う。

何がロマンだ。ほんと、男ってバカ。

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