いん・ざ・ぼっくす
「なーんか惜しいよね、美野里さんて。黙ってれば普通に美人なのになー」

「何気に失礼だよね、垣内は」

手にしていた書類で垣内の頭をパコンと叩く。

「くだらないこと言ってないで、早く新製品について考えなさいよ」

「えー。わかってないなぁ。アイデアって、白い紙をじーっと見て浮かぶもんじゃないでしょ? こうして、何気ない会話からユニークな発想が生まれるもんだと思うんだよね」

そう言うと彼は席を立った。
童顔な顔に似合わないスラリとした長身を私は見上げる。

「何気ない会話って。女子高生のパンツと、今私達が考えなきゃならないキッチン雑貨とどう結びつくっていうのよ」

「ですよねー。やっぱ無理があったか」

普段はクリっとした大きな目が、笑うと三日月みたいにキュッと細くなる。彼はその表情や言葉で、人の心を解きほぐして、簡単に懐に入り込んでくる。
まるで愛玩動物みたい。可愛くて、誰からも愛されるタイプ。

「うーん。アイデアね~……」

腕を組んで部屋をぐるりと見渡した彼は、「あっ!」と、声をあげ、こちらに振り返る。

「このダンボール、秘密基地によさげじゃないっすか?」

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