いん・ざ・ぼっくす
内心、ちょっとワクワクしていたのだけど。それを隠すため、気難しい顔を作り、「はぁ」と、ため息混じりで立ち上がる。それから彼の方へ近づいていった。

今日は、パンツスーツで良かった。軽々と足を上げて、ダンボールの中に入り込んだ。

ひざを抱え、三角座りをする。かなり大きいとは思っていたけれど、さすがに大人ふたりだと窮屈だ。

「楽しくないですか?」

「まぁまぁ楽しい……」

「ですよね?」

「とか思うわけないだろ!」

彼の頬を指でつまんで左右にひっぱった。

「いでっ。痛いっ、美野里さんっ」

散々引っ張ってから、手を離す。

「こんなことやってる場合じゃないだってば。いい加減、アイデア出さなきゃヤバいんだからね……て、えっ、きゃあああ」

立ち上がりかけた私の腕を、垣内が引っ張る。
そのせいで、私の体はまたダンボールの中に戻ってしまった。

「ちょ、何すんの」

「シッ」

垣内が人差し指を立てる。
思いのほか真剣なその表情に、私は身を堅くする。そして気づく。
ドアの向こう。廊下から誰かの話し声が聞こえる。

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