いん・ざ・ぼっくす
――ガチャ

ドアノブが回る音。

ヤバい。
いやいやいや。別にいかがわしいことをしてるわけじゃないんだよ? けどさ。ダンボールの中でふたりで身を寄せあってるなんて、あらぬ誤解を招いてしまうかもしれない。

能天気な垣内も、さすがにこの状況を見られるのはまずいと感じているのだろう。

このタイミングで箱から出るよりは、いっそここに隠れておこう。そう思ったのか、彼は手を伸ばすと、内から開いていた上部を閉じる。

途端に、目の前が暗くなった。

「ちょッ、狭いってばっ」

「シッ! 静かに! ちょっとだけ我慢してください」

動いたせいで体勢を崩し、ふたりの体はかなり密着してしまった。

私の体の下には垣内がいる。なんとか両手をついて踏ん張っているものの、油断したら彼の上に落ちそう。

「ねぇ。どこだっけ?」

「うーん。覚えてないよー」

この声。同じ企画部の、ユリちゃんとカナエちゃんだ。話の内容から察するに、何かを探しにここにやってきたらしい。

「ひとつずつ、開けていくしかないんじゃない?」

「だねぇー」

ヤバいヤバいヤバい。こっちこないで。
そう願っているのに、彼女達の足音や声は大きくなってくる。

ウソでしょ? 近づいてきてる。

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