いん・ざ・ぼっくす
「もしかして風邪ひいてます?」
実は今朝から調子が悪かった。だけど、風邪だと自覚したら余計に辛くなりそうだったから、熱を測ることもなく出勤したのだ。
「今日はもう帰った方がいいんじゃないですか?」
「そんな……無理だよ。今日は午後から大事な会議もあるし。風邪ぐらいで休んでられないの。それに早く新製品のアイデアを……」
「あー……それなら」
少しバツの悪そうな顔をした垣内がジャケットのポケットをごそごそ探る。
「ごめんなさい。本当はオレ、試作品作ってきてたんです」
ポケットから出した彼の手にはめられていたのは……。
「鍋つかみ?」
「はい」
カエルの形をしている。親指とその他の指とで掴むミトンタイプ。掴む部分がカエルの口になっていて、その上部にはクリリとした丸い目が二つ。
「どうっすか? ケロケロ」
鍋つかみをパペットみたいにして口を動かす垣内。
「可愛い! てか、作ってきたなら、早く出しなさいよー」
「んー」
垣内が目を泳がせる。
「いやまぁ……。美野里さんとの打ち合わせ楽しいし、引き伸ばそうかなぁ……と。すみません、下心アリアリで」
今度はペコっとカエルで頭を下げる。
「下心って……なにそれ」
「つまり、告白です」
ニッと白い歯を見せて笑う垣内。
ちょっと待って。今さらりと言ってのけたけど、わりとすごい発言じゃなかった?
実は今朝から調子が悪かった。だけど、風邪だと自覚したら余計に辛くなりそうだったから、熱を測ることもなく出勤したのだ。
「今日はもう帰った方がいいんじゃないですか?」
「そんな……無理だよ。今日は午後から大事な会議もあるし。風邪ぐらいで休んでられないの。それに早く新製品のアイデアを……」
「あー……それなら」
少しバツの悪そうな顔をした垣内がジャケットのポケットをごそごそ探る。
「ごめんなさい。本当はオレ、試作品作ってきてたんです」
ポケットから出した彼の手にはめられていたのは……。
「鍋つかみ?」
「はい」
カエルの形をしている。親指とその他の指とで掴むミトンタイプ。掴む部分がカエルの口になっていて、その上部にはクリリとした丸い目が二つ。
「どうっすか? ケロケロ」
鍋つかみをパペットみたいにして口を動かす垣内。
「可愛い! てか、作ってきたなら、早く出しなさいよー」
「んー」
垣内が目を泳がせる。
「いやまぁ……。美野里さんとの打ち合わせ楽しいし、引き伸ばそうかなぁ……と。すみません、下心アリアリで」
今度はペコっとカエルで頭を下げる。
「下心って……なにそれ」
「つまり、告白です」
ニッと白い歯を見せて笑う垣内。
ちょっと待って。今さらりと言ってのけたけど、わりとすごい発言じゃなかった?